「せっかく田舎に移住する(または住んでる)んだし、いっちょ猟師でもやってみるか! でもどうやってなるの?」
という方向けに、狩猟に必要な手続きをまとめてみました。
猟師(マタギ)になるための手続き
猟師になるための手続きは大きくわけて以下の5ステップです。
①狩猟免許取得
②銃砲所持許可取得
③銃などの道具を買う
④狩猟者登録
(⑤有害駆除従事者登録)
以下、順に解説していきます。
①狩猟免許取得
最初はとにかく狩猟免許を取得することです。これがなければ何も始まりません。
ただし、狩猟免許を取得しただけではまだ狩猟はできず、そのあとに狩猟者登録と、場合によっては有害駆除従事者登録が必要になります。
自動車免許だと免許証と車があれば日本中どこでも走れますが、狩猟免許は免許証と道具だけでは狩りができないのです。
車でざっくり例えるとこんな感じ。
・狩猟免許→自動車運転免許(まだ公道を走る権利なし)
・狩猟者登録→〇〇県で11~2月の間に走ってもいい権利
・有害駆除従事者登録→〇〇県でそれ以外の期間に走ってもいい権利
なんだかややこしく見えますが、手順に従って粛々とやっていけば大丈夫です。
さて、免許の種類は以下の4つに分かれます。
・銃(第一種) 散弾銃・ライフル銃
・銃(第二種) 空気銃
・罠
・網
これらはそれぞれ別で、例えば銃と罠を使いたい場合は両方の免許を取得しないといけません。車とバイクの免許みたいなもんですね。
試験日程
試験は年に1~3回程度。いずれも一日で終了します。日程は都道府県ごとに違うので、「〇〇県 狩猟免許」で検索するか、お住まいの市役所の農業部署で聞いてみてください。一度に銃と罠といったダブル受験も可能です。
試験内容
①知識試験、②適正試験、③技能試験の3つです。
どれも難易度は低いですが、事前に行われる講習会には必ず参加してください。講習会で習ったことがまんま試験に出ます。マジメに講習を受けて、あとは半日ぐらい復習の時間がとれれば、ほぼ確実に合格できます。
これに合格すれば、狩猟免許が都道府県から交付されます。ちなみに期間は3年間で、さらに続けたい場合は更新が必要です。
②銃砲所持許可取得
(罠と網は関係ないので飛ばして、次の「③銃などの道具を入手」に進んでください)
ご存知のとおり日本には銃刀法があり、猟銃を持つには警察の許可が必要になります。
流れは以下の通り。
初心者講習受講→(教習資格認定申請→射撃教習受講→)銃砲所持許可申請
※カッコ内は散弾銃・ライフル銃のみ必要です。空気銃の場合は必要ありません。
初心者講習受講
最初のステップです。かかる時間は1日。申込先は警察です。
午前中に猟銃等取扱読本を教科書に講義を受けて、午後にテスト。50問中45問正解で合格です。合格すればその場で講習修了証明書が交付されます。
講習はどこの県でも年に数回やっています。日程は「○○県警察 銃 初心者講習」で検索すれば出てきます。HPですぐに見つからない場合は警察に問い合わせてください。
警視庁HP 各種講習会
教習資格認定申請
こちらも申込先は警察です。
次のステップ「射撃教習受講」のために必要です。
必要書類は下記リンクをご覧ください。
警視庁HP 教習資格認定申請 現に猟銃の所持許可を受けていない者
射撃教習受講
こちらは警察ではなく、射撃場に直接電話で申し込みます。
以下HPに射撃場一覧があります。銃は射撃場で用意していますが、弾が用意されているかどうかは申し込みをした際に確認してください。ない場合は持参する必要があります。
射撃テストがあり、合格すれば教習修了証明書が交付されます。ここまでくればあと少しです。
一般社団法人全日本指定射撃場協会HP 射撃場一覧
銃砲所持許可取得
再び警察に申し込みます。
ここで「初心者講習の修了証明書」と「射撃教習の修了証明書」が必要になります。このステップでは特にテスト等はありません。
必要書類は下記リンクをご覧ください。
警視庁HP 所持許可申請 現に猟銃等の所持許可を受けていない者
ちなみに、ステップには含めませんでしたが、銃砲所持許可申請の前に銃とガンロッカーを購入し、「譲渡等証明書」を交付してもらう必要があります。次の「③銃などの道具を入手」で確認していきましょう。
③銃などの道具を入手
・銃
猟銃と銃弾は、銃砲店で買えます。ネットで「銃砲店」で検索してみてください。銃は10万円台から。引退する猟師の知り合いがいれば譲ってもらえることもあります。
銃砲店には、銃砲所持許可申請の前と後、合計2回行く必要があります。申請前に、購入する銃を決め、「譲渡等承諾書」を交付してもらいます。これが銃砲所持許可申請に必要になります。この時点では銃そのものはまだ手元にありません。実際に銃が手元にわたるのは、許可後になります。
一番よく使われるのは散弾銃(ショットガン)。ライフルを使う人もいますが、免許取得して10年経たないと所有が認められないこと、高い技術が必要なことなどの理由で、少数派です。
・ガンロッカー
銃を所有する人のみ必要。猟銃は鍵付きのロッカーで保管することが義務付けられています。
・罠
主に以下の2種類です。どちらもネットショップで買えるのでググってください。自作も可能。
ハコ罠:いわゆる檻です。シカが入るぐらいの大型のもので5?6万円。タヌキなどの小動物が入る小型檻で1?2万円ぐらいが目安です。
くくり罠:足を踏み入れた瞬間、その重みで作動し、金属のロープを足首に巻きつけて捕獲します。シカやイノシシ用で、小動物やサルは捕まえられません(体重が軽いと踏んでも作動しないため)。値段は5,000~15,000円。ふつうは複数箇所に仕掛けるので最初から数台必要です。何回か使うとバネが弱って買い直さなければいけないので消耗品と考えてください。
④狩猟者登録
次は狩猟者登録です。繰り返しになりますが、狩猟免許を取得しただけでは狩猟ができず、各都道府県で登録をしてはじめて狩猟ができます。こちらは狩猟免許とちがって試験などはありません。指定された日に必要書類と手数料を持っていけば、数分で手続きは完了です。
「猟期」と呼ばれる狩猟可能期間は冬の限られた期間、11月15日~2月15日の間(※)です。そう、狩猟はいつでもできるわけじゃないんです!
(※場所によって異なることがあります)
それに先立って、狩猟者登録の受付を行います。免許所有者には郵送などでお知らせが来るので安心です。ちなみにこの登録は毎年必要です。
さあ、これで手続きはすべて完了です!
「あれ? 手順は⑤まであったような…」
はい。そのとおりです。
ただし手順⑤は少し毛色が異なります。
⑤有害駆除従事者登録
①狩猟免許取得~④狩猟者登録までは、「自分の都合で狩猟をしたい」という方のためのもの。本人が望めば、誰でも可能です。
対してこちらは、「有害駆除」という名前のとおり、畑の作物を食い荒らす動物(有害鳥獣)を駆除するためのもので、他人(農家)の都合です。「狩猟をしていい期間(猟期)じゃないけど、害獣が増えると農家が困るから、特別に許可を出しましょう」ということです。
そのため、いくら猟師が狩猟をしたいと望んでいても、自分の都合だけでは登録ができません。有害許可を発行しているかどうかと手続きはお住いの市役所の農業部署に問い合わせてください。
まとめ
猟師になるための手順は
①狩猟免許取得
②銃砲所持許可取得
③道具を入手
④狩猟者登録
(⑤有害駆除従事者登録)
でした。
たとえ趣味であっても、初期費用はけっこうかかります。銃だと合計で10~20万、罠でも5~10万といったところ。また毎年の狩猟者登録でも数万円かかります。そういったところも含めて考えたいですね。
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