田舎のメンタリティ 稼ぐのは悪いこと?

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「田舎の人って素朴で優しくてあったかいよね?」
都会の人からはこんな感想をもらうことがあります。
この感想は間違ってはいません。
よく言えば親切、悪く言えばお節介。お願いしたことはもちろん、頼んでいないことまであれこれ口出しをしたり世話を焼いてくれたりします。
マンションの隣人に関心を持たない生活が当たり前になっている人からすると、こうした田舎の人の対応は新鮮に映るのでしょう。
一見さんはこうした田舎気質を好ましいと思ってくれることが多いですが、ずっと住んでいると田舎特有の欠点も目につくようになります。

田舎の人は抜け駆けを嫌います。

変わったことや人より良い思いをすることはよくないことで、何事もみんな足並みをそろえてやらないとトラブルの種になります。せっかく良いことをしていても、これまで誰もやっていないことだったり、足並みを揃えていなかったりすると、どこからか足を引っ張られます。そのため、イノベーションが起きにくい土壌になってしまっています。

これにはそれなりの理由がありますが、詳細は別記事で書いているので興味があればどうぞ。
参考:村社会じゃない田舎を探す方法

以前、こんなことがありました。
地域のある若手有力事業主が、本業とは別に、一気に複数事業に進出したことがありました。具体的な情報は伏せますが、例えるとパン屋をやっている人が、いきなりピザ屋とマッサージ店と幼稚園を同時に作るようなことをしました。
ピザは同じ小麦粉だしわからなくはないけど、マッサージ店? 幼稚園? なぜ? 内情を知らない素人から見ても、軽く億は超えそうな投資でした。しかも本業と関係なさそうなことばかりで、シナジーがあるようにも思えない。はっきり言ってナゾの事業展開でした。
ですが地域にとっては、それで新たな雇用が生まれることに変わりはありません。一経営者が、一気にたくさんの雇用と大きな経済効果を生み出したのです。
そんなチャレンジをする人はこれまでいなかったので、私は「よくわからないけど、がんばれー」とひそかに応援していました。
しかし周りの人たちの反応は違いました。
「失敗すればいいのに」

ふだんから儲けている(であろう)人がさらによくわからないことをやって儲けようとしている。そんな金持ちは痛い目に遭えばいい。
これを聞いて、「ひどい!」と思う人も、「そうだそうだ!」と思う人も、両方いると思います。
正直、気持ちはわからないでもないんです。
お金持ちを妬む気持ちは昔からある普遍的なものです。私にだってないわけじゃありません。
だけど、それをあからさまに表に出すのはどうよ、と思います。
雇用がないと言われる田舎で、色んな人に雇用を提供して、さらに地元にお金を落としている。誰でもできることではありません。
それにお金持ちの人って、何もせずにお金持ちになったわけじゃありません。大多数のお金持ちは、人より努力して、失敗したら借金まみれになるリスクを背負って、それでどうにか成功してお金持ちになっています。
だけど、ふつうの人はあまり経過にはスポットを当てず、現在お金持ちであるという結果だけを切り取ります。
これを見ていて、私はこう思いました。

「ここはチャレンジをする人に後ろ指を指す土地柄なのか」

変化を嫌い、同質的でない人を非難する。こういった気質は、田舎の悪い点だと思います。
その土地が存続していくには、時代に合わせて自分を変えていかなければなりません。変化のないままではいずれ滅びます。
しかし、そのことを自覚しているひとはまだまだ少数です。これまでやってこれたんだから、なんだかんだで今後もやっていけるって、と気楽に考えています。

この出来事以来、私は田舎の存続というものに危機感を持つようになりました。

また、収入が少ない人が多いというのも、田舎気質に一役買っていると思います。

田舎の人のお金持ちの基準って何だと思います?

自分の家を持っている?

いいクルマを持っている?

海外旅行に行っている?

どれも違います。
正解は「ペットボトルの水を買っている」です。

実際に、私はペットボトルの水を飲んでいるときに言われたことがあります。

「金持ちだねえ」

言った人はマグボトルのお茶を飲んでいました。

この人の行間を読むと「自分はお茶を水筒に入れてきて、飲み物を買うお金さえ節約しているのに、あんたは一本150円もするペットボトルを気軽に買えるぐらい財布に余裕があるんだね」ということでしょう。

軽い皮肉でしたが、私は腹が立つより先に、悲しい気持ちになってしまいました。

ペットボトルが妬みの対象になってしまうぐらい、生活を切り詰めているのです。そしてそういう人に限って、どうやったらもっと稼げるようになるか、とは考えないのです。自分はがんばって働いているのに生活はいつまでたっても苦しいままだ。金持ちはラクして優雅な生活をしている。なんて悲しい思考。なんて出口の見えない思考。

こんなことを言うのは、もとからの田舎人です。田舎で生まれ育って、田舎で働いて、外の世界を知らずに育った人たちです。望んで田舎に移住してきた人は、たとえ貧乏暮らしをしていても誰もこんなことを言いません。

「田舎の人って素朴で優しくてあったかいよね~」

そう思って移住を志す人は、田舎の人には違う側面もあるということは知っておいてください。

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